特性曲線法/概要と感覚的な理解

概要

一般に,独立変数 \(x\),\(y\) の関数 \(u(x,y)\) に関する準線形偏微分方程式

$$  a(x,y,z) \frac{\partial u}{\partial x} + b(x,y,u) \frac{\partial u}{\partial y} = c(x,y,u) $$

を,連立常微分方程式

$$  \frac{d\bar{x}}{ds} = a(\bar{x},\bar{y},\bar{u}), \frac{d\bar{y}}{ds} = b(\bar{x},\bar{y},\bar{u}), \frac{d\bar{u}}{ds} = c(\bar{x},\bar{y},\bar{u})$$

を初期条件

$$  \bar{x} = x_0, \bar{y} = y_0, \bar{u} = u_0 $$

で解くことによって解く手法である.

細かい説明

\( C: z = u(x,y)\) のグラフ(つまり,偏微分方程式の解曲面)を考えてみる.

$$  \phi (x,y,u) = z  –  u(x,y) $$

これの、勾配を求めると

$$ \nabla \phi = \left( \frac{\partial u}{\partial x}, \frac{\partial u}{\partial y}, -1 \right) $$

なので,\( C \)が曲面上のいかなる点でも接平面\( \pi \)を持つとすると, \(\nabla \phi \) が法線ベクトルの一つ(ここでは\(\bf{n} \)としとく)である.

ここで,ベクトル場\( (a, b, c) \)と\(\bf{n} \)について,

$$ (a, b, c) \cdot {\bf{n}} = (a, b, c) \cdot \left( \frac{\partial u}{\partial x}, \frac{\partial u}{\partial y}, -1 \right)  $$

$$                                   = a(x,y,z) \frac{\partial u}{\partial x} + b(x,y,u) \frac{\partial u}{\partial y} – c(x,y,u) = 0 $$

が成立するので,ベクトル場\( (a, b, c) \)は接平面\( \pi \)上にあることが分かる.

ここで,\( C \)と接平面\( \pi \)の交線\( l \)上の動点P\( (x(t), y(t), u(t)) \)を考えると,\( l \)の点Pでの接線ベクトル\(\bf{d} \)は,

$$ {\bf{d}} = \left( \frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt}, \frac{du}{dt} \right)  $$

と書けて,ベクトル場\( (a, b, c) \)と\(\bf{n} \)が垂直であることから,

$$ {\bf{d}} // (a, b, c) $$

となるので,比例定数\( k \)を用いて以下のような式が導かれる,

$$ \frac{dx}{dt} = ka,  \frac{dy}{dt} = kb, \frac{du}{dt} = kc$$

\( k \)を消去して,

$$ \frac{dx}{a(x, y, u)}  = \frac{dy}{b(x, y, u)} = \frac{du}{c(x, y, u)} $$

パラメータ\( t \)を固定すると,

$$  \frac{dx}{dt} = a(x,y,u), \frac{dy}{dt} = b(x, y, u), \frac{du}{dt} = c(x, y, u)$$

という連立常微分方程式が導かれる.

(\( t \)⇒\( s \)に,\( x, y, u \)⇒\( \bar{x},\bar{y},\bar{u} \)にして考えると最初の式に一致する.)

\( x, y, u \)の\( t \)に対する増分が分かるので,初期条件\( t = 0 \)での\( x, y, u \)が分かれば,その後の\( x, y, u \)が追跡可能ということ.

簡単な例と感覚的な理解

例えば,偏微分方程式

$$ \frac{\partial u}{\partial x} + 2x \frac{\partial u}{\partial y} = 0 $$

を考えると,

$$  \frac{dx}{1}  = \frac{dy}{2x} = \frac{du}{0} $$

となる.左の二つに注目して

$$ 2xdx = dy $$

両辺を積分して整理すると,\( C_1 \)を定数として

$$ y – x^2 = C_1 $$

となる.続いて\( u \)を求めにかかる.

もちろん,分母が0ということはありえないので

$$ du = 0 $$

となるから,

$$ u = C_2 $$

が導かれ,二つの独立解に現れる任意定数\( C_1, C_2 \)について関数関係

$$ C_2 = F(C_1) $$

が成り立つとすると,一般解\( u(x,y) \)は

$$ u(x, y) = F(y – x^2)$$

となる.

例として,\( u(x,y) = y – x^2 \)と\( u(x,y) = cos(y – x^2) \)を考えると,以下のような解曲面が得られる.

 

この曲面は,無数の解曲線から存在し,この解曲線を特性曲線と呼ぶ.

さらに特性曲線をxy平面に投影したものを特性基礎曲線と呼び,下の図は\( u(x,y) = cos(y – x^2) \)において,\( u(x,y) = 0.1 \)となるときのものを描いたものである.

よく見ると,\( y = x^2 + c \)の二次曲線が出現していて,これは\( y – x^2 = Const. \)となるような線の上で一定になるような関数ならすべて微分方程式の解になるということになる.

参考