特性曲線法/キネマティックウェーブモデルへの応用

特性曲線法は斜面からの雨水流出を物理的に表現する流れのモデルとして使われるキネマティックウェーブモデルにも使用することができる.

あんまりよく分かっていなかったので,再度勉強してみました.

 

キネマティックウェーブモデルの概要

詳しい導出は参考文献のほうを見てほしいが,開水路の一次元非定常漸変流の基礎方程式(質量保存・運動量保存)から,

以下のようなキネマティックウェーブモデルが導かれる

\[ \frac{\partial h}{\partial t} + \frac{\partial q}{\partial x} = r  \tag{1}\]

\[  q = \alpha h^m \tag{2}\]

ここで,\( h \)は水路床から垂直に測った水深,\( t \)は時間座標,\( x \)は空間座標,\( q \)は単位幅流量,\( r \)は降雨強度を示す.

また,\( \alpha \)は粗度係数\( n \)と水路床勾配\( \theta \)を使うと

$$ \alpha = \frac{\sqrt{\sin \theta}}{n} \tag{3}$$

さらに,\( m = 5/3\)である.

式(2)を(1)に代入して整理すると,

\[ \frac{\partial h}{\partial t} + \frac{dq}{dh}\frac{\partial h}{\partial x} = r  \]

つまり,

\[ \frac{\partial h}{\partial t} + \alpha m h^{m-1} \frac{\partial h}{\partial x} = r \tag{4} \]

ここでおなじみの特性方程式を立てると,

\[ \frac{dt}{1} = \frac{dx}{m \alpha h^{m-1}} = \frac{dh}{r} \tag{5} \]

今回は移流方程式(1次元の波動方程式)の時のように分母が一定ではないので,ちょっとめんどい.

とりあえず,左二つ(tの式=xの式)と両端の二つ(tの式=hの式)に着目すると,

\[ m \alpha h^{m-1} dt = dx \tag{6} \]

\[ r dt = dh \tag{7} \]

の2式が成立する.

後は,前回と同様に初期条件と境界条件を与えると水深を時々刻々を追跡することができる.

具体的には,式(6)で得られる特性基礎曲線上で式(7)をとけば,水深\( h(x,t) \)の時空間変化を得ることができる.

これを,模式的に示すと以下のようなムービーのようになる.

[動画を貼る]⇒後で更新します.すみません

初期時刻\( t = 0 \)において,\( x_p(0) = x_0, h_p(0) = h_0 \)であるような\( (x,t) \)平面上の動点\( x_p \)を考えると,\( x_p \)は時間とともに特性基礎曲線(式(6)),即ち動画の破線を通って移動し,式(7)によって特性基礎曲線上の水深\( h_p \)が求まる.

\( L \)を斜面長とする場合,初期時刻および斜面上端での水深\( H_I, H_B \)を与え,

$$ 初期条件 (t = 0での水深) h(x,0) = H_I(x), 0 \le x \le L \tag{8} $$

$$ 境界条件 (x = 0での水深) h(0,t) = H_B(t), t \gt 0 \tag{9} $$

のもとに多数の特性曲線を描いてあげると,\( x = L \)での水深\( h(L,t) \)を求めれば,斜面下端での水深の時間変化が分かる.